オステオパシーとは100年以上前にアメリカのA.T.スティル医師によって作られた治療哲学で、一般的なリハビリで行われている様な筋肉や骨を中心とした施術にとどまらず、内臓系、血管系、脳神経系など全身のあらゆる器官を対象に施術します。
日本ではまだ知名度は高くありませんが、欧米では国家資格として認められている国も少なくなく、発祥の地アメリカでは医師同等の権利を有する資格として手術や薬を処方する事も許されています。
欧米では医師、看護師、理学療法士、ケースワーカーなどと一緒にオステオパス(オステオパシー施術者)も医療チームの一員として参加し、一人のお子様を多方面からサポートするといった体制をとる国が珍しくありません。
オステオパシーと一般的な機能訓練の違い
オステオパシーの哲学の中に、「構造は機能を支配する」という原則があります。
“構造”についてウィキペディアで調べると、
「構造とは、ひとつのものを作り上げている部分部分の組み合わせかた」
「ひとつの全体を構成する諸要素同士の対立・矛盾・依存などの関係の総称」
などと定義されています。
オステオパシーの哲学で言う所の“構造”とは、「身体の部分部分、器官同士の関係性」を意味します。
身体が正常に動けるという事は、構造に問題がないからであって、万が一どこかに問題が出ると、“身体の可動域の異常”、“痛みや痺れなどの感覚異常”、“循環障害”などといった形で日常生活に支障が出てきます。
骨・関節系、血管、内臓、神経系、そして全身的にそれらを繋ぐ筋膜など、身体の構造が協調的に動いているからこそ、歩いたり走ったりといった機能が可能になるのです。
例えば…
例①
スキー靴を履いてしゃがもうとすると、足首が曲がらないので普段のしゃがみ方ではしゃがめないですよね?
つまり、スキー靴を履く事で出来た足首の構造的問題に対して、普通とは違ったしゃがみ方をする事で機能的に代償しているのです。
例②
右の膝が痛くて充分体重が掛けれないと、身体を逆側に傾けて、なるべく右の膝に負担をかけない様に足を突っ張って歩きますよね?
これは膝関節の構造的な問題に対して、身体を傾けて歩くという機能で代償したのです。
この様に、構造は機能に大きな影響を与えるのです。
つまり、歩き方を変えたいのであれば、まずはそれに必要なだけ身体の可動性、つまり構造の改善を行う必要があるのです。
脳性麻痺の子供は、先天的な麻痺という問題を持って育つ過程で、“麻痺がある中でどう身体を使えば動きやすいか?”と自分なりに動かしやすい独自の動き方を学習し、それに適合した身体構造になっています。
機能訓練で正常な動き方を学習させようと促しても、自分なりの動かし方に適合した可動性は持っていても、正常歩行に必要な身体の可動域は持っていないので思ったように結果が出ないのです。
正常発達において、身体の発育(構造の変化)に追随する様に、勝手に出来る事が増えていきます(機能が変化する)。
脳性麻痺の施術においても、身体の構造を正常な状態に調整すれば、機能もより正常な形に変化してきます。
もちろん理学療法でも関節可動訓練や筋肉のストレッチなどは行なっていますが、オステオパシーがより構造面に強い理由として、理学療法は関節や筋肉をターゲットに可動性改善するのに対し、オステオパシーは骨や筋肉は勿論の事、内臓、脳・神経系、血管などその施術範囲が広い事です。
当院では、オステオパシーが理学療法の機能訓練より優れていると考えている訳ではなく、それぞれの職種の長所を考慮して、オステオパシーで身体を動きやすくして、なるべく良い状態で理学療法士が機能訓練するといった協調的な体制の構築こそが、お子様にとって効率の良く無理のない運動発達を促せるのではないかと考えます。