脳性麻痺の理学療法でよく名前を聞くのが、ボバース法とボイタ法ではないでしょうか?
個人的にはボバース法は機能訓練、ボイタ法は構造訓練の色が強いと思います。
まずは実際ボバース系病院で理学療法士として働いてきた経験から、ボバース法に関する強味と弱味を、あくまで私見として書きたいと思います。
ボバースについてですが、一般的に「ボバース法」という呼称が有名になってますが、本質的にはイギリスのボバース夫妻が考えた神経生理学をベースとして考えられたリハビリテーションに対するコンセプトであり、「ボバースコンセプト(概念)に基づいたリハビリテーション」や「ボバース・アプローチ」の方が呼称としては適切だと思います。
単なるリハビリのテクニックや施術レシピではなく、ボバース夫妻の提唱したボバースコンセプト(概念)に基づいて施術する事こそが、「ボバースアプローチ」「ボバースコンセプトの本質なのです。
1940年台にイギリスのボボース夫妻が提唱したボバース概念とは、中枢神経系の疾患によって生じる姿勢や運動の障害に対するリハビリの考え方であって、最新の脳・神経生理学に基づいているため、常に進化し続けています。
常に進化を続けているがゆえに、ボバースセラピストの中でも、「去年言ってた事と今年とでは大分違うよなー」なんて話す事よ多々ありますw
しかし言い変えれば、時代の流れに常に追従し、良い意味で進化し続けてるリハビリである事が分かります。
故に勉強しなければおいてかれるのでボバースセラピストは勉強家が多いですし、セラピスト間での技量の差が出やすいという一面を持っています。
施術はボバースセラピストによるハンドリング(手による操作)により、『より正常な運動感覚を脳に入力する事により、脳の再学習や脳の神経可塑性による回復を促すこと』を目的としてます。
正常発達と比較して、そのお子様が問題となっているところに対し、ボバースセラピストのハンドリングで運動の再学習を促すって感じが主なので、機能を重視した機能訓練の色合いが強いです。
一部の熟練したセラピストは構造の異常に対しても適切にアプローチしていますが、私が見てきた限りでは、大部分が出来ないことをセラピストの介助で練習する機能訓練中心に偏りがちです。
セラピストの内部教育でも、関節のマニピュレーションなどの構造的なテクニックよりも、歩行介助、動作・運動介助などの機能的な練習が圧倒的に多かったです。
リハビリの評価基準も、機能改善したかどうかが点数化されたものでリハビリ効果の有る無しを判断しているので、より機能訓練中心となりやすく、歩行器、装具の導入は積極的に行っています。
私が病院勤務していて抵抗があったのは、脳性麻痺のお子さんの手術に関しての問題意識が低く、少なくないお子様が、小学校高学年から中学生までに1-2回は手術をする事などに何の疑問も抵抗も感じず、「仕方ないこと」とその状況を割り切ったセラピストが多いことでした・・・。
身体構造もきっちり診れるボバースセラピストがいたら最強なのですが、今後、そんな方が台頭して下さると救われるお子様も増えるのではと願わずにはおれません。
少しネガティブな一面を記載しましたが、「目の前の困ってる人に対して、全力を尽くしなさい」というボバースセラピストとしての心得『ボバース・スピリット』は今でも自分の施術家としての芯となっています。
ボバースでは単に技術の伝承だけではなく、先輩から後輩への精神的な部分の継承もとても大事されており、広く理学療法の業界を見てもボバースセラピストは特別と言って良いほど意識が高く、熱意を持って働いていると思います。
技術的な部分では人によって意見の相違はあれど、医療人として一番大事な部分を大事に患者のために頑張るボバースセラピストの姿勢こそが、日本において脳性麻痺の理学療法の中で一番支持されている一番の要因ではないかと考えています。
だから、エビデンスも大事ですがそこに傾倒し過ぎて、数値やデータでは見えない大事なものを大事にするボバースの本来の良さみたいなものを失わないで欲しいと心から思います。